2012年4月22日日曜日

内定切りへの対処術 | 就職活動のための法律ガイド | NPO法人POSSE


内定切りへの対処術

執筆:川村遼平(POSSE事務局長、東京大学大学院修士課程)

○「内定取り消し」に遭ったらどうしよう?

「内定取り消し」―。就活生にとっては何とも不吉な言葉である。「内定取り消し」に遭ってしまうと、就職活動はよくてもう一度やり直し。タイミングが遅いと学校は卒業できても就職先が見つかっていない、なんてことになりかねない。そして、日本の企業は最初の正社員を逃してしまうと、後の就職は一気にハードルが高くなってしまうのだ。

できれば自分は「内定取り消し」に遭いたくない、と思っていても、2009年は厚生労働省が把握しているだけでも2143名の若者が「内定取り消し」に遭っている。いまや、「内定取り消し」はいつ自分の身に降りかかってきてもおかしくない時代になっているのだ。

○「内定取り消し」とは何か?

「内定取り消し」の対処術を知る前に、そもそも「内定取り消し」とは何なのかを理解しておこう。きちんとした理由もなく労働者を解雇してはいけないということは、誰しも一度は耳にしたことがあるはずだ。実は、「内定取り消し」も一種の「解雇」(=雇用契約の解除)にあたる(※1)。つまり、「内定取り消し」も、きちんとした理由が無いとできないということだ。一般に、「内定取り消し」の合理的な理由とされるのは、以下のどれかに該当する場合だ。

・大学を卒業できなかった
・病気やケガで働けない状況になった ・罪を犯した
・経営上、雇えない状況になってしまった(「新卒切り」の整理解雇の部分を参照。)

このどれにも該当しない理由で「内定取り消し」に遭った場合は、会社は違法な「内定取り消し」をしていると思って良いだろう。たとえば、「君は思っていたよりもわが社に向いていない」とか、「他にもっといい人が見つかったから」とか、「思ったよりも業績が伸びなかった」などの理由で「内定取り消し」をすると、それは違法なものとなる。

つまり、「会社が内定を取り消しても仕方ないな」と思われる事情が無い場合には「内定取り消し」は違法なものになるのであり、「仕方ないな」と判断される条件はかなり厳しいというわけだ。


起動する方法歯科スタッフ

○「内定取り消し」の対処術1〜「内定」であることをはっきりさせよう〜

では、「内定取り消し」の対処術を見ていこう。労働基準法は、雇用契約書を交わすことを使用者に義務付けている。この雇用契約書や内定通知などをもって、「内定」が成立したとみなすことができるのである。

しかし、労働基準法に違反して、「雇用契約書」を交わさない企業が多いというのが実情である。「雇用契約書」を交わさず、内定通知も出さず、口頭だけで「4月からうちで働いてください」と言われているだけの場合、「内定」が成立したことを示す証拠は無い。実際、そういう状態で「内定取り消し」に遭って、「そもそも内定なんて出していないよ」と会社に言われてしまうと、後は水掛け論だ。何も書面でやり取りしない会社に対しては、「内定取り消し」の予防策として何ができるだろうか?

一つは、メモをきちんと残しておくこと。会社に言われたことや契約の内容などを含め、口頭だけのやり取りの場合はメモをとって記録しておこう。こうしたメモは裁判などでも証拠として採用される。水掛け論を避けるために、メモは有効な対処法であることを覚えておいてほしい。

もう一つの方法は、メールで確認することだ。たとえば、内定が決まったらすぐ、「内定をいただき、ありがとうございました。4月からもよろしくお願いします。」などのメールを人事担当者などに送っておく。「内定ではありません」などの返答が来ない限りは、そのやり取り自体が会社との間に「内定」の合意があったことを示す証拠となる。こうしたEメールでのやり取りも、やはり裁判でも証拠として通用するくらいの信頼性があるから、大事なメールは削除せず、ウェブ上でも保存し、印刷もしておこう。

これらの記録が残っていると、内定通知が出る前のいわゆる「内々定」の段階での取り消しも、会社に損害賠償を請求する余地がある。100万円の訴訟を勝ち取った事例もあるのだ。


あなたは、ジョブには何を求めますか?

○「内定取り消し」の対処術2〜納得いかない、と思ったら〜

こうした準備をしていたのに、それでも「内定取り消し」に遭ってしまうということはよくあることだ。もし「内定取り消し」に遭ってしまったら、大事なのはすぐに専門家に相談すること。また、大学の学生課にも報告することだ。大学の学生課では、内定取り消しを出した企業名を管理し、厚生労働省に報告している。また、大学によっては1年間留年させてくれるところもある。選択肢を増やすためにも、大学にどういう制度があるのかを聞いておいて損は無い。

ただし、大学の学生課は労働法のことはあまり知らないと思っておいた方がいいだろう。「内定取り消し」に遭った企業とのやり取りに関しては、きちんと専門家に相談することだ。POSSEに来た相談者にも、学生課に対応を任せたがために全く会社の責任を問えないまま内定辞退を余儀なくされてしまった学生もいる。担当者に悪気があったわけではないのかもしれないが、それだけ対応は素人には難しいということだ。

「内定取り消し」に遭った場合は、企業に対して「4月から働けるように求める(=地位確認)」、「損害賠償を求める」、と大きく分けて二通りの要求をすることができる。前者は特にこれ以上説明する必要は無いので、後者の場合について説明しておこう。

損害賠償については、4月からもらえていたはずの賃金や慰謝料などを要求するのが一般的だ。慰謝料は精神的に被った苦痛に対しての賠償要求で、賃金は「会社に入って働いていればもらえたはずの賃金」に対する賠償要求のことだ。正規雇用の場合は特段の事情が無い限り数十年の雇用を前提としている。つまり、会社は数十年賃金を払い続けるという契約を労働者と交わしているのだ。この約束を破ったのだから、部分的に賃金相当額を払え、というのは契約のルールから言って当然の帰結と言える。


ここで、iは、テネシー州メンフィスで会計の仕事を見つけることができます

ちなみに、たとえば1年間の契約社員の「内定取り消し」の場合には、払われるべき賃金の幅は最大1年となる。これも、上述の「契約のルール」が生活保障を要求することの根拠になっていることに起因する。なお、内定をもらった際に「他社での就職活動をしない」ように言われている場合には、損害賠償の額は大きくなる。他社で働かないように労働者に要求したからには、その責任は重くなる、ということだ。

以上の交渉については、弁護士に依頼して労働審判制度を利用する方法、労働組合に加入して団体交渉を行う方法、行政の「あっせん」という制度を利用する方法の3つのやり方がある。それぞれのメリット・デメリットについては、"辞めろ"と言われたときの対応マニュアルをご覧ください。(労働審判と労働組合についてはマニュアルのp10-11を、あっせんについてはマニュアルのp8-13を参照のこと。)

今すぐ交渉するつもりは無くても、卒業後の短くない人生がかかった問題である。まずは専門家に話を聞いて、自分にどういう選択肢が残されているのかを考えてほしい。

○「内定取り消し」の対処術3〜「内定辞退」の対処術〜

ここまで、「内定取り消し」の対処術について紹介してきたが、一方、「内定辞退」を労働者に求める会社も増えているので、この点を最後に補足しておきたい。

先ほど見たように、「内定取り消し」には合理的な理由が必要だ。また、「内定取り消し」者を出してしまうと、大学の学生課や厚生労働省にマークされてしまう。そこで、合理的な理由が無いにもかかわらず内定を取り消したいと思っている企業や、「内定取り消し」をばれずに行いたい企業のやり方として、労働者に「内定」を辞退するように求めるという方法がなされている。

「内定辞退」を会社に求められた場合の対処術は、ただ一つ。「断る」ことだ。辞退してしまうと、後になって思い直しても取り戻すことはできない。もし「内定」を辞退するように求められて、「こんな会社では絶対働きたくない」と思ったとしても、辞退はしない方がよい。「内定取り消し」によって被る損害の賠償を企業に求めることができるのは、あくまで「自分は働きたかった」ということが前提となるからだ。


反対に、断り続けてさえいれば、「内定辞退」という最悪の事態は避けることができる。「辞退」にするには、あくまで労働者の申し出が必要だからだ。

会社は、もし後ろ暗いところがないなら、最初から正面きって「内定取り消し」をしてくる。「辞退」を求めるのは、それなりの理由があるということだ。そして、「取り消し」よりも責任の軽い「辞退」にするために、会社はいろいろなことを言ってくる。「君のキャリアに傷がつかないように、「取り消し」よりも「辞退」の方がいい」、「「辞退」に応じてくれなくても、どうせ「取り消し」てやる」などだ。

「「取り消し」よりも「辞退」の方がキャリアに傷がつかない」というのは会社の説得の際によく聞くことだが、これは事実に反している。まず、再就職の際に「取り消し」だったのか「辞退」だったのかを面接に行く会社が知る術は無い(違法に知る可能性はあるが、それはブラック企業であることを自分からばらしてしまうことになる)。次に、もし前の会社を辞めることになった理由を申し出たとしても、やむをえない事情であると予見される「取り消し」と、自分から勝手に内定先を辞めた「辞退」とでは、どちらが心証を悪くするだろうか?

とにかく、選択肢を自分から無くしてしまわないためには、仮に会社で働く気を失ってしまったとしても「辞退」には応じないのが懸命、ということだ。

以上のような予防策や対処法があることを知って、安心して内定決定後の学生生活を楽しもう。

※1正確には「内定」は「始期付解雇権留保付労働契約」である、というのが裁判所の見解だ。細かい説明は省く(詳しく知りたい方は『POSSEvol.2』の拙稿を参照のこと)が、「労働契約」であるという点が最大のポイントである。



These are our most popular posts:

転職の際、前職の源泉徴収票を求められるのでしょうか? 面接時.. - 人力 ...

交渉というからには双方が要求の理由や受け入れの是非について十分な根拠を示され なければなりません。 一般的に ... 卒業後、現在の施設管理会社に就職し、技術畑一筋 にやってきたベテランです。仕事に ... 面接時に給与に関して企業側から聞かれたら、 ある程度具体的な数字で示すと同時に、企業側の事情も考慮し検討の余地を示します。 Aさんの ... プロに相談し、転職をものにするのが今では最も賢い方法といわれています 。 read more

採用される面接方法

そして、日本の企業は最初の正社員を逃してしまうと、後の就職は一気にハードルが 高くなってしまうのだ。 ... もう一つの方法は、メールで確認することだ。 ... 損害賠償 については、4月からもらえていたはずの賃金や慰謝料などを要求するのが一般的だ。 ... まず、再就職の際に「取り消し」だったのか「辞退」だったのかを面接に行く会社が知る 術は無い(違法に知る可能性はあるが、それはブラック企業であることを自分からばらし てしまう ... read more

内定切りへの対処術

面接時に書類で伝えた現職の給与と実際の給与に開きがありまして・・・・ もし求められ た場合の回避方法などもあれば教えて下さい。 ... 新しい会社から、要求されたらどう したらいいのか、という質問ですか? .... 新しい就職先が決まったら、lovery-flowerさん のアドバイスに従って、確定申告をする必要があるとの理由で「源泉徴収 ... read more

就職の面接の質問と回答

... とベスト回答. 面接の質問と回答:面接方法と面接の質問への最高の答えを準備する ときには要求されます質問。 ... 必要があります。 あなたがbehavorial就職の面接時に 尋ねた、あなたがそれらに答えるだろうか考えることができる質問の例を確認します。 read more

0 件のコメント:

コメントを投稿